1 宮城県は,2020年8月,株式会社日本総研との間で,委託費を3630万円として「仙台医療センター跡地における県有施設の再編に向けた基本構想策定支援業務」に関する委託契約(以下「本件業務委託契約」と言います。)を締結しました。本件業務委託契約は,公金の無駄使い以外の何ものでもありません。
そこで,仙台市民オンブズマンは,10月1日,公金の支出差止等を求める住民監査請求を行いました。
2 本日,監査結果が示されましたが,その結論は,契約をめぐる経緯や判断を考え合わせると,本件業務委託契約は総合的かつ政策的見地から決定されたものであり,裁量権の逸脱または濫用はないので,請求を棄却するというものでした。
本件業務委託契約は,①現地改修か集約・複合化かの検討を委託する必要性がないこと,②現地改修か集約・複合化を確定しないまま,基本構想を作成しても無駄になること,③本件業務委託契約の真の目的が集約・複合化の推進にあることからすれば,必要のないものであり,業務委託料3624万5000円の支払は明らかな税金の無駄遣いであり,違法です。
今回の監査結果は,県側の説明を鵜呑みにしたものであり,明らかに間違っています。
3 宮城県美術館が極めて高い文化的価値を有しており,宮城県民にとって,かけがえのない重要な文化的資産であることから,宮城県が,2019年12月12日開催の第5回県有施設再編等の在り方検討懇話会(資料15)で,「宮城県民会館,宮城県民間非営利活動プラザ及び宮城県美術館の集約・複合化」という方向性を打ち出した時点で,宮城県には,県内外から,宮城県美術館の現地存続を強く求める多数の声が寄せられました。
その時点で,村井知事が,宮城県美術館の現地存続を強く求める県内外の多数の声に真摯に耳を傾け,宮城県美術館の文化的価値を正しく理解した上で,「宮城県民会館,宮城県民間非営利活動プラザ及び宮城県美術館の集約・複合化に向けた検討を進める」のか否かについて,熟慮を重ねて基本的な方向性についての政策判断を行うべきでした。そのようにしていれば,本件業務委託契約を締結するまでもなく,容易に宮城県美術館の移転断念という結論に到達することができたはずです。
ところが,村井知事は,そのような基本的な方向性についての政策判断をおろそかにしたまま,宮城県美術館の現地存続を強く求める県内外の多数の声を一切無視して,宮城県美術館の文化的価値を正しく理解しないまま,「宮城県民会館,宮城県民間非営利活動プラザ及び宮城県美術館の集約・複合化」という結論ありきで,突き進み,その過程で,3624万5000円もの巨額の税金を投入して本件業務委託契約を締結したのです。
村井知事は,本件業務委託契約に基づいて株式会社日本総合研究所がA案が妥当であるとの結論を出すことを強く期待し,A案を強引に推し進めるつもりであったが,県民の支持も,県議会の支持も得られないことが明白となり,株式会日本総合研究所からメリット・デメリットの分析結果を受領する以前に,A案を断念するに至りました。
そのような村井知事の政治決断は,本件業務委託契約契約を締結しなくても,いくらもでも可能なものであったことは明らかであり,この点からも,業務委託料3624万5000円の支払が税金の無駄遣いであることは明白です。
このような事態は,村井知事の独善的な政策形成手法によって引き起こされたものであり,村井知事の責任は極めて深刻かつ重大です。
4 仙台市民オンブズマンとしては,今回のような税金の無駄遣を根絶するために,住民訴訟の提起を視野に入れつつ,問題の整理と責任の追及を続ける所存です。
【監査請求の結果について・PDF版】
オンブズマン・監査請求結果についてのコメント201130 〔HP掲載版〕