齋藤拓生
1 納付遅れの発生
仙台市職員の給与については、一般のサラリーマンと同様、給与から所得税が差し引かれ、仙台市がまとめて翌月10日までに税務署に納付しなければなりません。6月30日に支給される夏のボーナスについても、翌月の7月10日までに、差し引いた所得税を税務署に納付しなければなりません。
ところが、本年6月30日に支給された夏のボーナスから差し引いた所得税合計9億6063万8388円を,期限である7月11日(7月10日が日曜日なので、7月11日が納期限となります。)までに納付することを忘れてしまったことから、仙台市は、延滞税145万2700円と不納付加算税4803万1500円の合計4948万4200円の支払わなければならなくなってしまいました。
2 仙台市の原因についての説明
仙台市は、「マニュアルの記載が不十分だったことに加え、担当者の所得税納付に係る法令の理解が不足しており、給与支給月の翌月10日ではなく、会計処理上、源泉所得税の払出し手続きが可能になる日(本件の場合、7月4日)の翌月10日が納期限と誤認していた。」、「当該処理に係る決裁の過程で、7月11日納付分に、6月30日支給の期末・勤勉手当に係る源泉所得税が含まれていないことに気付くことができなかった。」と説明しています。
そして、仙台市は、担当職員には、重大な過失がないので、地方自治法第243条の2の2第1項に基づいて損害賠償責任を問うことはできないので、一般財源で、すなわち、税金で、補填することにした、と発表しました。
3 数々の疑問点
(1)重大な過失があるのではないか?
給料から差し引いた所得税の納付は、毎月、行われています。夏と冬のボーナスについても、これまで、納期限に遅れることなく、納付されています。まさにルーテインワークです。それがどうして納付することを忘れてしまったのでしょうか。担当職員には、うっかりとか、やむを得ないではすまされない重大な過失があるのではないでしょうか。
(2)決裁者が気付かないはずがないのではないか?
「当該処理に係る決裁」を行った者は、6月30日支給の期末・勤勉手当に」係る源泉所得税の納期限が7月11日であることを分かっていなかったのでしょうか。夏のボーナスに対する所得税の総額は、9億6063万8388円です。7月11日に納付した所得税に、夏のボーナスに対する所得税9億6063万8388円が含まれていないことに気付かないなどということがあるのでしょうか。
(3)同じ過ちを繰り返している!
仙台市建設局が法律相談契約を結んだ市内の弁護士への2019~21年度業務委託料にかかる計13万688円について、担当課職員が、源泉徴収が不要となる法人と勘違いしていて、源泉所得税を納付せず、本年1月に税務署に修正申告するという事態を引き起こしていたにもかかわらず、今回の源泉所得税の納付遅延を発生させてしまったというのはあまりお粗末というほかありません。
(4)道路照明灯問題との整合性はあるのか?
仙台市が道路照明灯を撤去したのにもかかわらず電力契約の解約を怠り、電気料金を払い続けていた問題では、損失額の3440万円を、一般財源では補填せず、管理職が全額負担することしましたが、どうして、今回は、一般財源で補填することするのでしょうか。そこに、合理的な理由はあるのでしょうか。
4 仙台市に対する公開質問状の提出
以上のとおり、今回の仙台市の対応には、数々の疑問点があることから、仙台市民オンブズマンは、去る12月1日、仙台市に対し、上記の各疑問点に対する回答を求める公開質問状を提出しました。今後、仙台市の回答を検討し、住民監査請求・住民訴訟も視野に入れつつ、税金の適正な使い方を追求していきます。
以上