仙台市民オンブズマン|市民による行政の監視役
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  • 冥土の土産 オンブズマン

    高橋輝雄

     
     人生も早第四コーナー、70を越えた頃から「冥土の土産」を口にすることが多くなった。そのイメージはこうである。いよいよ時が来て冥土に向かう時は「渡海船」に今生の思い出を満載して船出をしようというものである。既に載っけて行こうとしている思い出は数々あるが、上から数えて三指の一つには必ず入る思い出は、「オンブズマンの思い出」である。

     誰の計らいかは知らないが図らずも初代の代表に選ばれ、設立総会を期にして以降テレビに新聞に雑誌にと頻繁に出るようになった。「天声人語」にも名が挙がったこともある。もともと対人恐怖症で人前でしゃべるのが苦手な私には有り得ない展開であった。浅野知事とテレビに出たときは緊張して何をしゃべっているのか分からなくなり、後で小野寺信一君に怒られる始末であった。でも「一夜明けたら有名人」の経験は偶然とはいえ有り難い思い出であった。
     
     改めて仙台市民オンブズマン著「官壁を衝く」に目を通してみたが、飲んで食って旅をすること位しか能が無い私が、そこに書かれたような明らかに時代を画するような社会的にも大きな意味のある活動に参加できたことは望外の幸せであった。また冥土ばかりではなく可愛い孫らに対する置き土産ともなった。私を引っ張り込んでくれた友達には深謝である。
     
     実質的には庫山事務局長の執筆になる前記「官壁を衝く」には、発足の1993年から6年間の活動の軌跡が筆者の胸の鼓動が伝わってくるような筆力で纏められている。とりわけその中でも「県庁を震撼とさせた730日」の食料費及び出張費をめぐる情報公開請求及び返還請求についての宮城県との攻防は、手に汗を握るような総力戦であり忘れ難い。その渦中にあって、その前半はオンブズマンの顔として新聞・テレビに露出し、後半はその例会と称する戦略会議におけるオンブズマン戦士の面々の「夜食担当」として腕をふるい、その後の記者も交えた懇親会での侃々諤々の議論・談笑も忘れ難い。
     
     オンブズマンの面々は実に多彩である。リーダー、サブリーダー、軍師、それに、作戦さえ決まればそれに沿って一気に動き出す一騎当千の戦士達。前期730日間の攻防では、その連携が見事に結実して勝利した(潔く敗北を認めた当時の「敵」の総大将浅野知事も敵ながら天晴れであった)。その戦いにリーダーシップも無く戦士としての能力も劣る私が直に参加することが出来たのだから望外の幸せであった。
     
     このような中、自らが勝手に選んだ役職が前記夜食担当であった。私にでも役立つことが何かないか、熟考の末選んだのがこれであった。やる以上は欠かさずやる。文句の出ない程度には美味く作る。自宅に帰って食べ直すことの無い位の量は作る。各オンブズマンの努力と比較しても劣らないと思われる程度の努力はする。そしてその目的は、オンブズマン活動が楽しく長く続くようにということであった。始めたのは3年間の代表を辞めてからなので既に22年間。毎月一度、月4回として何と254回。自らも驚いている。
     
     あれもこれも素晴らしい冥土の土産だと思っている。この25年間、出入りを含め盃を交わしたオンブズマンの面々には心からの感謝である。

    仙台市民オンブズマン

    事務局 仙台市青葉区中央4-3-28朝市ビル4F 宮城地域自治研究所内 TEL 022-227-9900 FAX 022-227-3267