仙台市民オンブズマン|市民による行政の監視役
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  • パソコン等に関する宮城県政務活動費・仙台地方裁判所判決
  • パソコン等に関する宮城県政務活動費・仙台地方裁判所判決

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     宮城県議会会派の自由民主党・県民会議は,平成25年3月から平成28年2月までの間にノートパソコン及び附属機器計18台,デスクトップパソコン及び附属機器等計36台,ipad計16台を総額1792万1506円で購入し,この購入全額全額について政務活動費を充てていた件で,オンブズマンが購入金額全額の返還を求めていた住民訴訟について,5月29日,仙台地方裁判所第2民事部において判決がありました(請求額949万9662円)。
     自由民主党・県民会議は,まとめ買いしたうえ議員に貸し付けていたパソコン等の購入費用の半額(835万1844円)を返還する一方,会派控室で利用していたパソコン等の購入費用121万7820円については一切返還しておりませんでしたので,今回の訴訟は残る949万9662円の返還を求めるものでした。
     本判決は,自由民主党・県民会議が会派控室で利用していたパソコン等の購入費用の半額60万8910円の返還を命ずるものの,まとめ買いしたうえ議員に貸し付けていたパソコン等の購入費用の残りの半分については返還する必要はないものとしました。
     

     オンブズマンでは,自由民主党・県民会議のパソコン等のまとめ買いは,①具体的な使途を考慮しないでなされた「予算の使い切り」であり,また②手引において政務活動費を充当するのが適当でないとされている「環境整備」費用にあたり,購入費用全部が違法になるはずであると主張してきました。しかし本判決ではオンブズマンの主張は認められませんでした。
     本判決の問題点は次の1点に尽きます。すなわち, 本判決は,「宮城県議会が作成した本件手引(注:「政務活動費の手引」のこと)は・・・・本件条例の定める使途に係る適合性判断に当たって十分に参考にされるべきである」と述べているものの,実際の判断に当たっては一切「政務活動費の手引」の文言を参照せずに判断した点です。
     

     「政務活動費の手引」には,「政務活動費は,・・・政務活動を行うための環境整備にまで充当することは適当ではない。備品や消耗品の購入に政務活動費を充当する場合には,政務活動に対する有用性が高く,政務活動に直接必要であると認められるものに限定すべきであり」と明記されています。今回の訴訟の審理で明らかになったパソコン等のまとめ買いの経緯からすれば,具体的な政務活動のために購入されたものではなく,政務活動の環境整備のために購入したことは明らかでしたので,「政務活動費の手引」の文言に照らせば,パソコン等のまとめ買いは手引に違反するものであると判断されるべきでした。
     本判決は「政務活動費の手引」の具体的文言にそって判断するものではなく,「政務活動の手引」の価値を貶める判決と言わざるを得ません。その上,本判決は「政務活動費の手引」を無視した結果,「原告においてそのパソコン等が政務活動に係る事務の遂行に全く使用されていないことを推認させる一般的・外形的事実」を立証することを求め,オンブズマンや市民が到底知りえない事実を立証するよう無理強いするものとなりました。
     

     「政務活動費の手引」は,宮城県議会自身が定めた運用基準です。私たち市民は,議会自身が定めた「政務活動費の手引」に基づいて政務活動費を支出するものと信じていますし,インターネット上に公開された政務活動費の領収証については「政務活動費の手引」に違反していないかどうかという観点からチェックしています。そうであるにもかかわらず,裁判所が「政務活動費の手引」の具体的文言を無視して政務活動費の支出の当否を判断しているのですから,裁判所は市民感覚から乖離していると言わざるを得ません。裁判所には常日頃から市民のお手本になるような判断をすることを期待しているところですので,誠に残念であるというほかありません。
     控訴するか否かは,今後さらに判決内容を精査して検討することにします。
     
    【判決PDF】
    判決①190529
    判決②190529
    判決③190529
    判決④190529
     

    (石上雄介)

    仙台市民オンブズマン

    事務局 仙台市青葉区中央4-3-28朝市ビル4F 宮城地域自治研究所内 TEL 022-227-9900 FAX 022-227-3267