以前からこのブログでも紹介している東北文化学園大の補助金支出に関し会計士、監査法人の責任を追及している裁判の判決がありました。
※事案の概要:
オンブズマンメンバーが、学園大が文部大臣に虚偽の財産目録を提出して大学設置認可を受けて四年制大学を開設したことについて、財産目録の監査を担当した会計士・監査法人に過失があり、そのため、仙台市が、大学設置認可がなければ支出しなかったはずの学校法人に対する補助金相当額の損害を被ったとして、仙台市に対し、会計士らに損害賠償請求をするように求めた事案です。
なんと!1審(仙台地裁)に引きつづき、控訴審(仙台高裁)でも勝訴です!!
高裁の判断は、1審とほぼ同じであり、
ずさんな会計監査の実態を指摘し会計士・監査法人の責任を認めたものでした。
※高裁で認められた会計士の責任の内容:
①預金残高及び借入金残高の確認に際しては、学園大の不正を出来る限り排除するために、会計士は学園大に任せず自ら残高確認依頼書用紙等を金融機関あて直接投函するなどして学園大を介さずに残高確認依頼書用紙などが金融機関に届くようにする義務があるところ、会計士はそれを怠った過失(会計士は、金融機関への投函を学園大担当者に任せた)。
②会計士が、学園大担当者に対し、残高確認書について必要数に余部を加えた数を交付した過失。(→残高確認書は金融機関が作成するための用紙であり学園大に余部を交付する必要性はない。むしろ学園大による残高確認書の偽造を招く。)
③スクールバスの自動車登録の確認を怠った過失
会計士らによる因果関係がない旨の主張も、高裁では全て排斥されました。
従って、会計士と監査法人には、仙台市に対して損害金を支払うべきであると判断されました。
さらに会計士らは、
仮に責任があるとしても本件補助金の交付という結果に向けて関与したのは
会計士・学園大だけではなく、第三者も含まれるのだから
全責任を会計士に負わせるべきではない
と主張しました。
しかし・・・
高裁は、
「会計士の過失のうち、
少なくとも残高確認依頼書を直接投函せずに学園大に任せた過失(過失①)、
残高確認書の余部を交付した過失(過失②)については、
被監査人が介在することによる不正を出来る限り防ぐという
残高確認の趣旨に反した単純かつ基本的な過失」
「監査制度の趣旨に照らせば、
会計士に単純かつ基本的な義務違反が認められる本件において、
会計士、監査法人らが負う損害額について
特に軽減しなければならない事情があるとまでは認められない。」
「仮に他の第三者が本件偽装工作に関与しているとしても、
加害者側の事情は加害者間の求償により解決すべき問題であって、
被害者に対する関係で参加人らが責任を負う損害額を
限定すべきであるとまでは言えない。」
と判断しました。
1審に引きつづき結論は妥当で、非常に論理的、説得的な判決でした!
ちなみに、監査法人・会計士は仙台市からどのくらいの金額の返還請求をされることになるのか・・・興味ありますか?
なんと、遅延損害金を含めれば、11億円以上を仙台市に返還することになるそうです・・・。
上告をしてさらに支払を滞らせれば、一体いくらになるのでしょうか・・。
・・・余計なお世話かもしれませんが、心配してしまいます(^_^;)
早めに仙台市に返還していただき、結果として仙台市に有効に活用されることを願っています。
それから、
今回問題となった監査法人は、全国4分の1のシェアを有する法人だそうです。
4分の1の企業全てに対し、
これまで本件のようなずさんな監査をしていたとまでは言いませんが、
今回の判決を教訓にして、今後は適切な監査をし、会社自体や株主、社員、社会の利益を守って欲しいと思います。
文責;みうら