齋藤 拓生
宮城県美術館については、現地改修ということが決まっていましたが、村井知事は、2019年になって,突如,仙台医療センター跡地において,宮城県民会館,宮城県民間非営利活動プラザ及び宮城県美術館の3施設を「集約・複合化」の方針を打ち出しました。3施設を「集約・複合化」すれば、国からの補助金が交付され、県費の支出を抑えることができるとういうのその理由です。
しかし、宮城県美術館は、前川國男さんが設計した極めて文化的価値が高い建物であり、コンクリートの寿命も50年は残っており、それを取壊して移転することはあまりにも無謀な計画でした。当然、県民から,強い反対の声が上がり、村井知事は、宮城県美術館を取壊し・移転して、3施設を「集約・複合化」の断念に追い込まれました。
村井知事の無謀な計画を阻止できたのはよかったのですが、問題は、宮城県が、2020年8月,3624万5000円もの巨額の税金を投入して,株式会社日本総合研究所との間で,美術館の現地改修と3つの施設の「集約・複合化」することメリット・デメリットを分析・検討することを内容とする業務委託契約を締結したことにあります。問題点は、2つです。1つは、メリット・デメリットを分析・検討は、審議会の意見や県議会での議論を踏まえて、宮城県が行うことが可能であり、日本総研への業務委託は必要がなかったということです。もう1つは、日本総研の分析・検討結果は、不十分・不完全なものであり、宮城県が3624万5000円もの委託料を支払うのに値しないということです。
仙台市民オンブズマンでは,第1の問題(契約は不必要)について、2020年12月25日,住民訴訟を提起しましたが、仙台地裁は、宮城県の裁量の範囲ないであるとして、請求を棄却しました。控訴しましたが、仙台高裁も請求を棄却しました。
そこで、2022年3月24日、第2の問題(日本総研の分析・検討結果が不十分・不完全)について、住民訴訟を提起して、現在、仙台地裁で裁判が進行しています。この裁判では、オンブズマンは、長町利府割断層帯の直下に位置する仙台医療センター跡地に宮城県美術館を移転することの問題点についての日本総研の分析・検討が極めて不十分・不完全であることを強く主張しています。長町利府割断層帯の直下に位置する仙台医療センター跡地に宮城県美術館を移転すれば、著名な美術品の貸出を受けることができなくなり、美術館として存立することは不可能となります。にもかかわらず、日本総研のその点についての分析・検討は極めて不十分・不完全です。オンブズマンでは、京都大学名誉教授の釜井俊孝先生にそのことに関する意見書を作成していただき、証拠として提出する準備を進めています。釜井先生の意見書を読んで、裁判官が、良心と法にしたがって判断すれば、必ずオンブズマンを勝訴させてくれるものと確信しています。今後の訴訟の展開に是非ご注目ください。
以上