平成24年6月26日午前10時より,仙台地裁(第1民事部)において,宮城県の非常勤の行政委員(選挙管理委員会の委員,教育委員会の委員,労働委員会の委員,収用委員会の委員)に対する公金支出差止請求事件の判決がありました。
結論は,やはり請求棄却でした。
判決の理由ですが,最高裁判決や先の仙台高裁判決の論理を引きつつ,今回の事実を当てはめたという感じで,特に目新しい所はなく,裁判官が自分の頭で考え判断した形跡は殆どありませんでした。
繰り返しになりますが,昨年末の最高裁判決の影響力は限りなく大きいですね。あの最高裁判決後に住民勝訴の判決を書くのは,裁判官にとって物凄く勇気が要ることだと思います。それでも裁判官は憲法上職権の独立が認められていますし,きちんと法と証拠に則った判決をしてくれるんじゃないかと,1%くらいは期待していたんですが,やはり駄目でした。
今回の事案の特徴は,平成19年度・平成20年度の上記委員会の委員経験者ほぼ全員に対して,勤務時間外の準備等についての書面尋問(アンケートのようなもの)を実施したことでした。
その結果,相当数の委員は勤務時間外に何も準備しないで会議等に臨んでいることが明らかになったのですが,一部の委員に勤務時間外の負担が大きいことをアピールされ,その部分をつまみ食い的に認定されこちらに不利に使われてしまいました。
我々も一部の委員が勤務時間外に頑張っていることは否定しないのですが,その頑張りが委員全員に対する報酬を基礎づけるといえるのか,また本当に報酬に値する負担なのかについて,裁判所にはもっとよく考えて欲しかったと思います。
また、宮城県はただでさえ財政がとても苦しい上,震災が発生し,さらに絶望的な財政状況だということでした。宮城県のHPを見ればこのことが嫌という程書いてありますので証拠としても提出しました。財政の問題については裁判所も触れざるを得ないと思ったらしく,最後に傍論で,
「今後,宮城県議会において,日額報酬制を採用するか否かはともかくとして,行政委員に対する報酬制度のあり方について,宮城県の上記財政状況との権衡の観点を踏まえて,相当期間内に改めて政策的,技術的見地からの判断を加えることが期待される」
と述べています。でも裁判所には,法律によって,違法な条例は違法と判断して支払いを差し止める権限が与えられているわけですから,議会任せにせず,自分で「おかしい」と思ったら,その思いに従って判断をして欲しいと思います。
裁量論と司法消極主義は,社会的影響の大きい判断はしたくないという日本人気質の裁判官にぴったりなものですが,憲法と法律は裁判所に日和見的判決出すことを期待しているのか,長年この問題をほったらかしにしてきた議会をあてにすることができるのか,裁判所はもう一度よく考えて欲しいです。
と,いつまでも文句を言っていても何も生まれません。齋藤拓生団長以下弁護団でしっかり判決の内容を検討して,控訴理由書を書きたいと思います。
甫守