宮城県の非常勤の行政委員に対する報酬を月額とする条例の違法性を訴えている裁判は、まだ、続いています。
平成24年12月25日、午後1時15分から、仙台高裁第1民事部で、この控訴審の判決がありました。結論は…… 控訴棄却(請求棄却の原判決を維持)でした。
判決の内容について、私の偏見に基づく解説をいたします。
まず、今回の判決は、主張の引用が雑です。仙台市民オンブズマンは、各委員の勤務時間は、勤務時間外の負担を考慮しても、概ね1勤務日当たり8時間以内に収まると主張していたのですが、なぜか「概ね月8時間以内」という引用になっています。これは、ただの誤字かとも思いましたが、4頁の2行目、11頁の15行目と2度も間違えていますので、誤字ではないですね。確かに、こちらの控訴理由書の記載は少し分かりにくかったと思いますが、きちんと原審記録を読めば、「1日8時間以内」という主張だと分かった筈です。裁判官は記録を読んでいないのでしょう。
あと、月額報酬制を採用するには「特別な事情」が必要との主張をこちらがしているかのような引用の仕方もしています(11頁8行目)。確かに原審の初期段階にはそういう主張もしていましたが、特に昨年の最高裁判決以降、この主張は事実上撤回しました。これも記録を読めば分かる筈ですが。
要するに、仙台高裁はこの事件を真摯に判断する姿勢が更々なかったということです。仙台市の同様の事件でも同じ仙台高裁第1民事部で、同じように雑な判決でした。最高裁判決があると、裁判官は思考が停止するのだと思いますが、負けさせる側の主張を曲解してそれを否定する論法は、仙台市の事件に引き続いてですから、仙台高裁第1民事部の悪癖なのだと思います。
それから、今回仙台高裁は、月額報酬制に「相応の根拠がある」という判断(12頁2行目)をしました。これには少し驚きました。最高裁も、原審も、「月額報酬制は合理的とは言えないけれども、裁量の逸脱濫用とまではいえないよね」というニュアンスだったのですが、明らかに県寄りの判断に内容を変えて来ました。その根拠は、「本件各委員は、県政の中心に位置づけられる重要な職務に遂行するもので」(原文ママ)あるからだそうです。しかし、職務が重要なら月額でいいというのは、飛躍し過ぎだと思います。法は、どうしてその重要な職務を行う人の報酬を、原則日額とすることにしたのか、仙台高裁は考えた形跡がありませんし、その重要な職務の実質が空洞化しているというこちらの指摘には、まったく触れず終いです。
相変わらずの司法消極主義もさることながら、判断過程のひどさには、強い徒労感を感じさせられます。オンブズマンは、行政と議会の改革以前に、裁判所改革を訴えないといけないかもしれませんね。
甫守