1 控訴審判決の内容
令和8年1月27日、自由民主党・県民会議が旧統一教会の関連団体の活動に出席するための交通費等(合計金約50万円)を政務活動費から充当したことを問題視した住民訴訟について、仙台高等裁判所にて控訴審判決が下されました。
控訴審は、違法性の判断について、「各支出に係る議員の活動の内容、県政との関連性、参加の態様に照らし、当該活動と議員の議会活動の基礎となる政務活動との間に合理的関連性が認められない場合には、当該活動に係る支出は、本件使途基準に合致しない支出として違法になる」と判示しました。その上で、「住民側が使途基準違反を推認させる一般的・外形的事実を主張立証した場合において、議員側がこれに適切な反証を行わないときは、当該政務活動費の支出は使途基準違反に適合しない違法な支出であると認めるのが相当である」旨判示しています。
このような判断枠組みのもと、ピースロードフェスティバルというイベントに参加するための交通費の支出のみが違法とされ、それ以外の支出は適法とされました。
2 オンブズマン側の主張
違法性が認められるためには、上記のとおり、まずは住民側が使途基準違反を推認させる一般的・外形的事実を主張立証しなくてはなりません。
そこで、オンブズマンとしては、①旧統一教会の関連団体は調査研究の目的に相応しい団体ではないこと、②対象議員のうちの1人が合理的な説明もなく政務活動費からの充当を取り下げていること、③参加の態様が調査研究のためのものとは考えられないこと、④議員からは何らの証拠書類も提出されていないこと、⑤議員の証言が不自然であること等を主張立証しました。
たとえば、議員側は「コロナウイルス感染症について意見交換した」と主張していたんですけど、旧統一教会はコロナウイルスについての専門的知見をお持ちなんですかね。意見交換をするのにもっと相応しい団体はあると思うんですけど。
また、対象議員のうちの1人が「書写道」等の活動について、政務活動費からの充当を取り下げました。「書写道」とは、口を漱いで手を洗い、「神様と私たちは父と子の関係」等の文鮮明氏の言葉を訓読して書き写すことらしいのですが、これが政務活動に該当しないことは言うまでもありません。しかし、当該議員は充当を取り下げた理由を頑なに説明しないわけです。後ろめたいことがないならば、説明すれば終わる話だと思いますけどね。そんなに手間や時間がかかることでもないですし、議員が参加していた旧統一教会関連の活動は怪しく感じます。
今回の訴訟で問題視された議員は、旧統一教会側から声を掛けられて活動に参加しており、自主的に参加した議員はいませんでした。調査の目的について、事前に予習したり、勉強会を開催した議員もいませんでした。こんなカンジなのに、議員は調査する気なんかあったんですかね。
さらに、議員側は、活動に参加した際のメモや資料があるとか言っていたんですけど、これらは一切提出されませんでした。あるなら提出した方が議員にとっても都合がよいと思うんですが、これを出さないっておかしくないですかね。
最後に、どの議員も、意見交換や講演の内容を具体的に証言できませんでした。「世界平和について意見交換しました。」とか「東アジアの平和的外交に関する講演を聴きました。」とか言う程度で、他は「覚えていない。」とか言ったんですよ。この程度で調査したって言えるんですかね。調査の成果が全くないでしょう。
以上からすれば、誰もが使途基準違反を疑うような事実が認められるように思うんですが、控訴審は、「本件支出につき、一律に本件会合等への参加が政務活動としての合理的関連性がないことを推認させる一般的・外形的事実が主張立証されたということはできない。」と判示しました。
3 雑感
控訴審の判示内容からすると、「使途基準違反を推認させる一般的・外形的事実」の主張立証のハードルは相当高いなぁと感じました。このハードルを高くしては、使途基準違反を事実上推定する判断枠組みを設けた意味がなくなる気がします。
当然ですが、住民側は当該活動に参加していないので、立証の資料を持っていないのが通常です。そうすると、主な立証手段は、「民間団体との意見交換」程度しか記載されていない政務活動報告書(これって報告書と呼べるんですかね)と、「具体的な内容は覚えていない。」と述べる議員の証言くらいです。この中で今回の訴訟で行った主張立証以上のものを求められるのであれば、もはや無理ゲーのように感じるのはボクだけでしょうか。
せめて、政務活動報告書はより具体的に記載するように改善すべきであるし、当該活動の際に用いられた資料も保管・開示すべきではないですかね。公金を使っておきながら、住民側から説明を求められた際には「覚えていません。」という言い逃れが通るのはおかしいと思います。
宮城県議会では、ホームページ上で過去5年分の政務活動費の収支状況一覧等を掲載しています。これは、この期間の政務活動費の使途の透明性を確保するためなのですから、この期間の政務活動について、使途基準違反を事後的に検証する上で必要となる証拠書類は議員側が作成・保管しておくことを義務付けるとか、議員は考えないんですかね。考えないんだろうなぁ・・・。
千 葉 展 浩
【参考資料】
