ベトナム海外視察訴訟について,事件が終了したのでご報告いたします。
(本事件の概要)
平成26年5月5日~5月9日,自由民主党県民会議の議員7名が議会から派遣されてベトナム海外視察(議会派遣)に行った際,これに政務調査費を使って自由民主党県民会議の菊地恵一議員が同行しました。
そもそも地方議会の議員に海外視察が必要であるかという問題もありましたが,議会が議会の議決で派遣する人間を決めて視察に送り出している中,それ以外の議員が政務調査費を使って同行することは許されるべきではない,菊地恵一議員がベトナム視察に支出した政務活動費を宮城県に返還するよう求めて裁判をしました。
(本事件の経過)
手続の進行は以下のとおりでした。
平成26年11月28日 監査請求
平成27年 1月26日 監査請求棄却
平成27年 2月24日 訴訟提起
平成29年 4月12日 第一審判決(請求棄却)
平成29年12月14日 控訴審判決(控訴棄却)
平成30年 5月24日 上告不受理決定
(地裁判決と高裁判決の概略)
仙台地裁判決は,「議会派遣の海外視察」と「議員個人の政務活動費による海外視察」は別個の制度であると一刀両断して両者の関連性を全く認めず、あくまで政務活動として適法か否かだけ判断し,こちらの請求を退けました。
仙台高裁は,「議会派遣による海外視察に同行した視察への政務活動費の支出であるということは,政務活動費支出の目的や具体的内容に照らし,その必要性ないし合理性が認められるか否かを判断する事情の一つとして考慮する」との判断を示しましたが,結論としては地裁判決同様,本件同行視察に関する政務活動費支出を適法と判断しました。
上告不受理決定により本事件は終了しましたが,上記仙台高等裁判所の指摘は,同行視察への一定の歯止めになるのではないかと考えています。
今後も,仙台市民オンブズマンでは,議員の不正・不当な支出については目を光らせていきたいと考えています。
畠山裕太
【判決書】