齋藤 拓生
1 仙台市地下鉄東西線第2次差止訴訟の提起
仙台市民オンブズマンは、開業後の実績により、最高裁で確定した仙台地裁判決が完全な誤りであったことは明白となったことを踏まえ、いわば「再審」として、平成30年3月27日、第2次差し止め請求訴訟を提起しました。
2 何が問題か?
仙台市営地下鉄東西線は、平成27年12月6日、開業しました。仙台市は、平成14年に国交省に事業認可申請した際、開業年度の1日当たりの利用者数を11万9000人と予測していました。ところが、開業1年目の実績は1日平均6万2263人、開業2年目の実績は1日平均5万5400人となっており、需要予測が大幅にはずれました。
東西線は一部の市民に一定の便益をもたらしているとはいえ、これまでは、経営破綻は必至であり、最終的には、仙台市民の重大な損失を及ぼすおそれがあります。
仙台市民は、そのような事態となることは誰も望んではいません。問題は、何故このような事態となってしまったのか、このような事態を避けることはできなかったのか、にあります。
3 仙台市民オンブズマンによる提訴
仙台市民オンブズマンは、平成15年、地下鉄東西線に関する一切の公金支出の差止を求める住民訴訟を提起しました。
主張の要点は、①開業時の乗車数11万9000人(1日)はもはや絵空事であり、せいぜい6万人である(1日)、②1日の乗車人数が6万人であれば、黒字転換は永久に不可能であり、一般会計から毎年巨額の税金を注ぎ込まなければ、経営を維持することができない、③仙台市は、費用便益費を1.62(費用1に対して便益が1.62)であるとするが,それは水増しであり、正しくは、0.82でしかない(費用に見合った便益が見込まれない)、④以上のとおりの実態の地下鉄東西線事業は、違法であり、そのような違法な事業に公金を支出することは許されない、というものでした。
仙台地裁は、平成17年12月22日、「1日当たりの乗車数11万9000人という仙台市の需要予測には、合理性が認められる。したがって、これを前提とする損益収支見込み(平成35年度には単年度黒字に、平成46年度には累積黒字になる。)も、著しく合理生を欠くものとはいえない。そうだとすれば、本件事業を実施するか否かは、被告市長がまさに社会的,政策的又は経済的な諸要素を総合考慮して決すべき政治的判断ということができ、議会のコントロールの下での被告市長の広い裁量に委ねられる。」として、仙台市民オンブズマンの請求を退けました。事実と証拠を無視した明らかな不当判決でした。その後、控訴も上告も退けられ、平成20年3月11日、不当な仙台地方裁判所の判断は確定しました。
4 仙台市は何故需要予測を誤ったのか?
仙台市は、平成24年8月22日、東西線の需要予測を、1人平均11万8702人から、1日平均7万9664人に、大幅下方修正しています。しかし、開業後の実績は、せいぜい5万5000人程度であり、大幅下方修正した数値すら達成できていません。
何故、仙台市は需要予測を誤ったのでしょうか。答えは明らかです。仙台市は、平成14年の許可申請の際、平成4年に実施した第3回パーソントリップ調査に基づいて需要予測を行っていますが、本来は、平成14年から実施されていた第4回パーソントリップ調査の結果に基づいて需要予測を行うべきでした。第4回パーソントリップ調査の結果に基づいて需要予測を行っていれば、1人平成6万人程度しか乗車しないことは予測可能でした。高裁段階では、この点も主張しましたが、裁判所は、「行政はまちがったことしない」という先入観から、行政の判断を追認してしまいました。
5 東西線問題の今後
本来は、議会で、もっと議論が尽くされるべきでした。鉄東西線の必要性、事業収支、仙台市の財政に及ぼす影響等々について、議会では、まったくといっていいほど議論は行われませんでした。当初の需要予測が誤りであったことが明らかとなった開業後においても、議会は、東西線の問題について、何ら議論を行っていません。そのような議員を選んだ市民にも責任の一端があることは否定できません。
仙台市民オンブズマンは、開業後の実績により、最高裁で確定した仙台地裁判決が完全な誤りであったことは明白となったことを踏まえ、いわば「再審」として、平成30年3月27日、第2次差し止め請求訴訟を提起しました。第2次差止請求訴訟では、需要予想誤りの原因を解明し、地方自治体の公共交通政策の在り方そのものに根本的メスを入れ、公金の無駄使いを正していきます。
第1回口頭弁論期日は、4月17日でした。第2回口頭弁論期日は、6月12日午後1時15分です。
以上