仙台市民オンブズマン|市民による行政の監視役
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    第18回全国市民オンブズマン松本大会(9月3日)     

    1 全体報告

    全国市民オンブズマン連絡会議より,随意契約で漫然と行われてきた10電力会社からの電力購入を質し10電力会社以外の特定規模電力事業者からの電力購入を促し、自治体の再生エネルギー利用を促進することを目的として,自治体電力購入調査報告がなされました。

    この結果,電力購入額に占める入札額の割合としては,回答した46都道府県中不明と回答した以外の43都道府県の電力購入総額の合計のうち入札額の割合は14.5%,19政令市は27.2%,中核市が4.3%であり,中核市における入札の割合が低いことが際立っていたことが報告されました。

    また,入札を実施した場合の10電力会社以外の特定規模電力事業者からの落札額の割合は,46都道府県で45.5%,19政令都市で47.9%,41中核市で51.1%と,いずれも半分近い割合でPPSが落札していることが確認されました。

     また,10電力会社から電力を購入する場合にグリーン電力証書をあわせて購入することで,再生可能エネルギーに対する助成をすることが可能となるが,これを購入している自治体は,46都道府県中3都府県,19政令市中4市,41中核市中3市と少なく,グリーン電力証書の購入は進んでいないことがわかりました。

    こうした調査の課程で,電力を随意契約にしている事情および,10電力会社と契約している事情についての質問に対しては、自治体からも管内にPPSが存在しないために契約できない(徳島県,四国電力)との回答もあり,独占の状態にあること,自治体内の部局が発電している電力を電力会社に買い取らせる契約をしていることを理由として,その部局について随意契約をしている(宮崎県,九州電力)など政官財の癒着を想起させる回答もあったことが報告されました。

    調査の中で、脱原発・エネルギー転換を促すためには自治体レベルでのエネルギーの転換を目指すためには、①自治体に対し,エネルギー選択権を行使させるためには,情報公開の徹底、政治倫理条例の制定をすること,②国に対しては,電力会社を情報公開法の実施機関にすること,原発立地交付金等の廃止をすること,③原子力ムラ解消のため,政官学業間の、人・金の流れの監視をすることが不可欠であるとの数々の重要な指摘がなされました。

    2 被災地からの報告(宮城,岩手,福島)

    ①宮城からの報告

    仙台市民オンブズマンからは、吉田大輔事務局長の報告があり、宮城県復興計画の問題点を指摘しました。

     まず、野村総研が宮城県復興計画の策定を全面的に支援しており、そのメンバーは財界中心に偏っており、本復興計画は財界主導のものであったこと、復興会議の4回中2回は東京で開催されていたこと、また、議論されている漁業の集約化、漁業特区の創設については、何ら漁業組合、漁民の意思を確認していないことが指摘されました。まさに県民不在の復興計画であるといえます。

    また、県がプレハブ協会へ発注したプレハブにつき半分はリースとして使用期間が経過すればプレハブ協会へ返すが、半分は売買として、県が引き取るという合意になっており、不要なプレハブの引き取りまでなぜ県が行うことになったのか、その経過について今後も仙台市民オンブズマンとして調査を進めていくことが報告されました。

     また、宮城県下の4区画のがれき処理業務のうち予算1920億円の石巻地区について、総合評価方式により鹿島を中心とするジョイントベンチャーが決定しましたが、業者の決定プロセスが適正なものであったか調査していくこと、残り3区についても、どのようなプロセスで業者が決定されるかについて注視していく必要があることが報告されました。

     ②岩手からの報告

    そのほか,岩手からは,労働局の調査で判明しただけでも1万1000人の離職者が生じており,多くの失業者が仕事がない状況である一方,岩手県における事業者の再生支援が不十分であり,被災地域産業地区整備事業による貸付や中小企業組合等復旧復興支援事業による補助の予算規模が需要の5分の1しかなく,事業者の復旧が到底困難である現状が報告されました。

     地元の事業・雇用等の人間中心の復興が行われなければ,建造物が出来上がっても済むべき者のいない廃墟のような町になってしまうとの危機感に満ちた報告でした。

     

    ③福島からの報告

    福島からは,東京電力福島第1発電所の事故を受け,子供の権利・教育をめぐって深刻な問題が起きており,子供の疎開が議論されているが,子供が疎開することは地域の崩壊につながりかねず,困難な問題を含むとの指摘がされました。一方で,福島県における原発について廃炉を求める訴訟運動を組織していくとの報告がなされました。

     また,原発事故の被害に対する損害賠償請求については,多様な事業に従事する多面的な市民の要求を組織化し,東電に対し『民の怒りを結集し』大きな運動を組織する必要があるとの強い決意が表明されました。

     

    3 記念講演:講師 千葉恒久弁護士

    午後からは,92年から96年までドイツのフライデルベルグ大学に留学、「世界の地球温暖化対策―再生可能エネルギーと排出量取引」の著者の千葉恒久弁護士より,記念講演「ドイツのエネルギー転換と自治体の役割」として報告がありました。

     ドイツでは、2011年6月30日に、エネルギー・ヴェンデ(エネルギー転換)のための法律を可決し、国内の全て原子力発電所を2022年12月31日までに順次廃炉を選択し、連邦政府と電力団体間の脱原発合意の確認がされております。この脱原発の方向に至るまでの経過および,地方自治体が果たす役割の大きさが指摘され,日本において脱原発を実現するためにも示唆に富んだすばらしい報告でした。

    第1部 ドイツはどうやってエネルギー転換を進めて来たのか

    ドイツにおいても、自由競争という論理で補助金の投入が躊躇され,成長を阻まれていた再生エネルギーでしたが,80年代半ばから州政府・研究機関の設立や,補助金の支出が始まるなどの後押しを受けて,徐々にそのシェアを伸ばしてきました。そして,電力引き取り法による最低買取価格の制定(1990年議員立法)により、急速に再生エネルギーのシェアが広がりました。

    最低買取価格の法定以降90年代以降風力、口コミで市民が風車を建てるケースが急増するなど再生エネルギーの普及が急速に進みました。この流れに逆らって、電力業界団体より「電力引き取り法は憲法違反」との裁判が起こされましたが、1996年連邦裁判所「電力引き取り法は合憲」と結論付けるなど、再生エネルギーが全国的に広まる端緒が報告されました。

    第2部

    さらに、第2部では,地方自治体がエネルギー転換において重要な役割を果たしたことを指摘されました。

    その取り組みの一環として、地方の市民団体の運動が全国に広がり、「再生可能エネルギーの優先のための法律」(EEG)として,再生可能エネルギーの発電コストに見合った最低価格の制定,および優先的な買取請求権を定めた法律が2000年に制定されたことが報告されました。

    また、自治体において100%再生可能エネルギーを目指すプロジェクトにも全国で113の自治体が実施しており,100万都市ミュンヘンにおいても,エネルギー公社ミュンヘンによって2025年までにミュンヘン市すべての消費電力を再生可能エネルギーにすると宣言されていることが報告されました。

    さらに,ここ数年で州が電力の供給網の買い戻しをする市民の動きが活発化しており,大きな運動になる見込みがあること,自治体がエネルギー公社を設立する動きも全国的になっていることが報告され,再生エネルギーの普及に自治体が大きな役割を果たすことができることが示されました。

     

    パネルディスカッション

    ついで,千葉恒久弁護士・高橋利明弁護士・吉原稔弁護士、コーディネータ井上博夫岩手大教授によるパネルディスカッションが開かれました。

     この中で,日本の電力供給の現状については、①原発に偏った電源開発が行われてきた②進まない再生可能エネルギー導入③10電力会社による地域独占④政官学業の癒着構造「原子力村」⑤原発マネー依存症の蔓延,との問題が確認されました。

    会場からの質問としては,脱原発には発電・送電の分離が不可欠なのではないかという疑問について、ドイツの例で送電網は原発を有する電力会社側が持っているにもかかわらず、再生可能エネルギーが伸びていったのは、法律が買取請求権を強力に保護しているからであり、発送電分離は大事だがそれだけではないことが確認されました。

     また、さらに,少数の電気事業者ではなく分散した電気事業者が参入することに対する不安も会場から寄せられましたが、分散的な供給について不安定な電気の質については、ドイツでは電力会社でコントロールされており、問題が生じていないことが指摘されました。

    日本においても、固定価格買い取り制度の運用が開始される見込みであるが、実際には、制度の実質的な内容が決まっていないことに不安があり、電力会社が買取を拒否できる条件が重要な問題になってくることが指摘されました。

     吉原弁護士からは、関西電力に対して起こした福井原発の再稼働差止め仮処分申請の中で,今回の福島第1原発事故によって、原発の安全基準自体が崩壊しており、電気事業法上の技術的基準がない状態であるので、安全基準失効論によって差止を要求するという取り組みのとの報告がなされました。その中で,全国各地の再起動阻止の訴え提起への呼びかけがなされました。

    最後に,オンブズマンでは,政官学業の癒着によって電力の独占をしてきた電力業界が招いたともいえる福島第1原子力発電事故を受けて,国および,全国の自治体への情報公開、全国各地で裁判闘争、再生可能エネルギーへ向かわせるための行動などを通じて、脱原発を目指す方向性が確認されました。(木山)

    平成23年9月4

    1 情報公開度調査報告

    まず,2010年度全国情報公開度調査についての報告がありました。交際費の開示状況,議会の公開度,3セク,外郭団体の情報公開等について,各都道府県,各市町村に質問し,その回答に基づいて,情報公開度の採点をしたものについて,ランキングの発表がありました。70点満点で全体の809自治体の平均は42.23点,都道府県毎の平均では,神奈川県の60.4点が最高点,最下位は高知県の30.6点でした。なお,東日本大震災で被災した宮城県は,アンケートを実施していないので,採点の対象とはなりませんでした。

    2 3セク損失補償契約無効判決の報告

    引き続き,安曇野市の「3セク損失補償契約」無効東京高等裁判所判決(平成22年8月22日)について,報告がありました。安曇野市が農協等と締結した損失補償契約が財政援助制限法3条で禁止されている「保証」に該当するか否かが争点となった事案でした。判決では,同法3条の趣旨から,本件で問題となった損失補償契約にも同法3条が類推適用されるとして,損失補償契約は無効であるとの判決が言い渡されました。現在,上告申立及び上告受理の申立がなされていますが,第3セクターに対し,やみくもに「損失補償」という形で税金を投入する時代が終わったことを示す,画期的な判決と言えそうです。

     

    3 各地報告

    まず,議会ウォッチャーの活動報告がありました。ベテラン議員ほど,居眠りやおしゃべりが目立つこと,議会傍聴まで行くには,階段を使うしかなく,高齢者や足腰に不安を抱えている人は傍聴が困難な状況にあること,発言内容の確認や議員の採点には多大な労力を要したことなどが報告されました。次に,政務調査費の違法支出について,名古屋,岡山,千葉から報告がありました。名古屋では,領収書などの事後的なチェックだけではなく,調査目的や支出の必要性を事前に審査するための制度設計が必要であるとの提言がなされ,提言に基づく制度案が紹介されました。岡山からは,岡山が政務調査活動で使用している審査基準表をご紹介いただき,使用方法の説明をいただきました。今後政務調査活動を始める団体には,大変役に立つ思料と思われます。千葉からは,情報公開請求をした結果,領収書が添付されていないなどいいかげんな報告書が出されたことや,印紙代の追徴を裁判所から求められ,大変な苦労をなされたエピソード等をお話いただきました。 続いて,群馬県から,八ッ場ダムの情報開示請求の判決について,報告がありました。八ッ場ダムが計画されている利根川の上流域に大雨が降った場合の洪水量を計算するための図面を国が情報公開しなかったことを受けて、訴えを起こし、争っていたものであり,公開決定命令が出されたものでした。今後の八ッ場ダムの建設差し止めに向けて,大きな意義があったと思われます。福岡からは,苅田町が基金17億円を使った外貨仕組み債購入問題について,オンブズマンの活動状況をご報告いただきました。平成23年2月には,仕組み債に関する住民訴訟が提起されました。仕組み債運用に関する自治体への住民訴訟は,全国で初めてとのことです。栃木からは,道路特定財源署名訴訟で,133円の支払い請求を勝ち取った裁判についてのご報告がありました。県は,ガソリンの暫定税率の維持を求める署名の協力要請を受け,自治体がこれに応じたものです。政治的問題につき一方の立場を支持する署名活動に協力することは,地公法35条(職務専念義務),同36条(政治的行為の制限)に反するとし,県知事等に対して,コピー代などの支払いを求めたものです。なお,現在は,高等裁判所で争われており,平成23年11月に判決の予定となっております。佐賀からは,九州電力のいわゆる「やらせメール問題」についてのご報告がありました。オンブズマンは,2005年のプルサーマル公開討論会や2011年再稼働説明会の検証をすべく,「県として第三者調査による総括と情報の徹底公開を要求する」と題して,動員の実態調査と責任の総括,調査結果の開示を求めているとのことです。

     

    4 大会宣言

     最後に大会宣言がなされました。宣言では

     第1 真に被災者の立場に立った復興事業を行うこと

     第2 すべての電力会社を独立行政法人等情報公開法の実施機関とし,エネルギー政策に関する情報公開の徹底を図ること

     第3 原子力発電所が立地し,あるいは立地が予定されている地方自治体の条例を改正し,誰もが当該地方自治体の情報公開を請求できるようにするこ

     第4 電源三法を中心とした交付金を廃止し,地方自治体がこれら交付金に頼らず,自主的なまちづくりが進められる制度の確立を目指すこと

     第5 首長や議員がその地位を利用し地方自治体の政策を歪めることを防止するため,すべての地方自治体が政治倫理条例を制定すること

     第6 市民が地域からエネルギーの選択を自主的・主体的に決定できるようにすること

     第7 政官学業の癒着を断ち,学術研究に携わるものは審理の探求にのみ忠実であること

    の7点について,満場一致で採択されました。

                                                       (わたなべ)                                                                    

     

    【不当判決】仙台市直轄事業負担金控訴審判決

      平成23年9月14日,直轄事業負担金の裁判(仙台市が国へ
    支払った直轄事業費負担金のうち, 仙台河川国道事務所の土地取得
    費用を返還するよう求めている事件(仙台高等裁判所(行コ)第7号))
     について,控訴審で判決言渡がありました。
       残念ながら控訴棄却でした。
      判決は,法律には,庁舎を建設する費用について,地方自治体への
    負担を定めた明文がないことを認めながら,結局,県の判決と同様に
    道路法の「費用」に含まれる,というものでした。
    しかし,道路法は,道路事業に関する法律であり,行政組織について定めた
    法律ではありません。事業に要する費用の一部として,行政組織としての
    庁舎建設の費用が含まれるという論法は誤りであると思います。
       オンブズマンとしては,上告する方針です。

    【不当判決】県直轄事業負担金控訴審判決

    平成23年9月8日,直轄事業負担金の裁判(宮城県が国へ支払った直轄事業費負
    担金のうち,仙台河川国道事務所の土地取得費用を返還するよう求めている事件

    (仙台高等裁判所(行コ)第6号))について,控訴審で判決言渡がありました。
      残念ながら控訴棄却でした。
     仙台高裁の判決は,①地方財政法12条を根拠に,国の経費であっても
    法律又は政令の定めがあれば地方公共団体に負担させることができるとし,
    ②道路法が費用負担を認めているので,③オンブズマンの請求は理由がない,
    とするもので,第1審以上に三行半的でした。
      国有地という資産取得のための費用をどうして地方自治体に負担させられるのか
    など,こちら側が提起した問題点に対して納得のいく回答が全くなされていません。
      オンブズマンとして上告する方針です。

    【裁判報告】県直轄事業負担金控訴審

    7月12日、宮城県直轄事業負担金控訴審の裁判期日がありました。

    当方と宮城県側の準備書面がそれぞれ陳述され、本日で審理は終了となりました。

    次回は判決となります。

     

    次回期日(判決)

    平成23年9月8日(木)午後1時10分~

    わたなべ

    【裁判報告】仙台市直轄事業負担金控訴審

    本日、仙台市直轄事業負担金控訴審の裁判期日がありました。

    当方と仙台市側の準備書面がそれぞれ陳述され、本日で審理は終了となりました。

    次回は判決となります。

     

    次回期日(判決)

    平成23年9月14日(火)午後1時15分~

    わたなべ

    県の直轄事業負担金の控訴審が始まりました

    仙台地裁が第1審で不当にもオンブズマンの請求を却けていたことは前にご報告したとおりです。
      →地裁判決の評価はこちら

    5月24日,県の直轄事業負担金の控訴審第1回期日がありました。

    オンブズマンは控訴状と控訴理由書を陳述しました。
    補助参加人国が反論したいとのことで,第2回期日が下記のとおり決まりました。
    次回は結審される予定です。
      <第2回期日> 7月12日(火)午後2時 仙台高等裁判所にて
                                         そごう

    【不当判決】市直轄事業負担金 仙台地裁判決

    平成23年2月10日,仙台市に対し,国に直轄事業負担金の返還を求めるよう要求していた裁判に関する判決がありました。

    仙台地方裁判所第3民事部はオンブズマンの請求を棄却しました。

     この裁判の内容については,宮城県の直轄事業負担金の件と同じです。

     本判決は,道路法や河川法に基づいて国が地方自治体に負担を求めることのできる「費用」の範囲については,直轄事業の必要性と地方公共団体の住民自治及び団体自治の調和の観点から一定の限界があると指摘しました。そして, 「当該費用の支出の目的,効果と地方公共団体に対して生ずることが想定される受益と関連性並びに費用負担の方法及び金額の相当性等の見地から見て,その支出が不合理と認められないことを要する」という基準を立てました。
       
    そして,本判決では,大要,仙台河川国道事務所は,国道の管理に必要な施設であり,継続的に敷地を利用するためには、敷地購入費用も必要なので、仙台市に負担を求めても不合理とはいえない,といった理由で原告の請求を棄却しました。

     
     先日の宮城県の判決とは異なり,一定の限界がある,と指摘した点については評価できます。しかし,「不合理と認められないことを要する」という基準は,何らかの理由が付けられればよい,という意味であり,結局は国の支出を追認するための論理でしかありませんでした。国と地方の財政関係を起立している地方財政法にもっと配慮していれば,このような結論にはならないはずです。

       
    オンブズマンとしては,これを不服として控訴しました。

                                       畠山

    【不当判決】県直轄事業負担金 仙台地裁判決

     平成23年1月31日、宮城県に対し,国に直轄事業負担金の返還を求めるよう要求していた裁判に関する判決がありました。
    仙台地方裁判所第2民事部はオンブズマンの請求を棄却しました。
     判決書は後日アップしますが,この裁判の内容と,判決について取り急ぎ説明します。
      
      国の直轄事業負担金として宮城県が納めた直轄事業負担金の中に,国の機関である仙台河川国道事務所のための敷地取得費用が含まれていました。
      
      道路法や河川法では,道路や河川の管理に関する費用は,原則として国が負担する旨定めていますが,法律で特別の定めがあれば,地方自治体に対して,一部負担させることができる旨も規定しています。国は,敷地取得費用は,道路法50条や河川法62条等にある,「その他の管理に要する費用」にあたるとして,宮城県や仙台市に負担させたのです。
      
      地方財政法は,地方自治体の財政について定めたものですが,その中には,地方自治体に処理権限がないことについては,原則として,国が地方自治体にその経費を負担させてはダメで,負担させるためには,法律や政令で特に定めなければならない,といった旨の規定があります。
      
      …そうすると,逆に,法律や政令で定めさえすれば,いかなる費用でも負担をさせることができるとも思えますが,そのように考えるべきではありません。
      
      憲法上,地方自治体は,国とは別にその存在を認められています。国が法律で定めさえすれば,どんな費用でも支払わなければならない,というのでは,国は地方自治体に多額の支出を強制することができ,地方自治という制度そのものが成り立たなくなります。地方財政法4条の5は,国が,地方自治体に対して寄附金を割り当てて強制的に徴収することを禁止していますが,これは,国が地方に対して圧力をかけ,地方自治を脅かすことのないようにするためです。
      したがって,道路法や河川法で定めさえすれば,どんな費用でも地方自治体の負担に負担させられるというものではなく,限界があってしかるべきなのです。
      
      そこで,オンブズマンは,道路法や河川法にある,地方自治体に対して負担を求めることができる「その他の管理に要する費用」とは,道路法等が規定する事業を行うために直接必要な経費に限定されると解釈すべきであると主張し,仙台河川国道事務所の敷地取得費用は,事業を行うために直接必要な経費ではないので,「その他の管理に要する費用」に含まれないと主張しました。
      
      しかし,裁判所は,上記のような解釈について,「原告のいう国道の「管理」に直接必要な経費は,極めて相対的な概念であって,国直轄事業負担金としての負担の可否を決する概念としては機能しがたい面があると言わざるを得ない」として,否定しました。
      
      今回の判決で残念な点は,オンブズマンの解釈を否定するのであれば,裁判所が,「その他の管理に要する費用」の限界について,何らかの解釈をし,費用負担の限界について規範を立てるべきであるのに,それをしていない,という点です。
      
      裁判所は,「結局,道路法49条が規定する「管理」に関する費用について,直接経費,間接経費を区別することなく,形式的な文理のとおり,これに要する一切の費用をさすことを前提にしたことをもって,本件負担を違法無効であるとすることはできない」と判示しました。
      これは,結局,「管理」の費用という名前がつけばどんな費用でも地方自治体に負担させる事ができる,と言ったに等しいものです。「形式的な文理」どおりの解釈でよいのだ,という判示は,道路法,河川法の上位にある憲法,地方財政法の趣旨を全く顧慮しないもので,残念というほかありません。
    オンブズマンとしては,控訴する方針です。
                                     畠山

    直轄事業負担金問題の今後の動き

    直轄負担金の返還を求めて訴訟が進行中ですが、全国知事会の要望や民主党政権の方針に基づき、国土交通省のワーキングチームは、本年1月15日、廃止に向けた行程表の案を公表しました。
    それによると、
    ①平成22年度は維持管理に係る負担金を特定の事業を除き廃止する(各法律の改正法案を通常国会に提出)。平成23年度には全直轄事業について維持管理の負担金を廃止する。
    ②負担金の内容となる基本負担額の算定から人件費や事務費といった「業務取扱費」を除外する(法律に明記するのか否かは言及されていない。公共事業の補助金の算定においても事務費を除く)。
    ③平成25年度までに現行制度の廃止とその後の在り方について結論を得る。
    ④平成21年度分は、当初の予定額通知を見直したうえ詳細な負担金の内訳書を提示する(見直しで、職員の退職手当分の人件費や営繕宿舎費を予定額から削除する)。
    ということになるようです。
    訴訟の対象である仙台河川国道事務所の庁舎移転先の「用地購入費用」は、「業務取扱費の中の事務費に含まれる営繕宿舎費」です。
    今回の見直しにより、平成21年度からは仙台河川国道事務所の移転建設費用は、宮城県や仙台市が支払う必要がなくなりますが、問題は今まで支払った分の処理です。
    法律で負担させる費用の内容は定まっています。費用の内容を、勝手に国土交通省が決めることはできません。正しい法律の解釈によって内容が定まります。
    私たちは、個別的な事業を行うための工事費や人件費・事務費は負担金の対象だが、事業を担当する組織(役所)の設置やその維持運営のための費用は、法律上の負担金の対象ではない旨主張してきました。
    今回の国土交通省の対応は、私たちの主張と結論的には同じですが、訴訟の対象となった用地購入費用を返還しなければ、「法律に基づく行政」とは言えません。宮城県や仙台市がどうするのかという点も含めて、今後の訴訟の動きに注目したいと思います。
                                                                             まつざわ

    仙台市の直轄事業負担金問題

     平成21年10月1日,直轄事業負担金問題について,仙台市に対する訴訟の第1回期日がおこなわれました。

     仙台市は答弁書を提出していましたが,まだ具体的な反論が記載されていないので,次回までに本件に関する具体的な主張をすることになりました。また,仙台市は国に訴訟告知(直轄事業負担金について訴訟になっていることを国に知らせる手続)をしています。次回までに国が参加するかどうか,また参加した場合に,直轄事業負担金についてどのような見解を出してくるかが注目されます。

    次回期日は,平成21年11月16日(月)午後1時15分~の予定です。
                              畠山

    仙台市民オンブズマン

    事務局 仙台市青葉区中央4-3-28朝市ビル4F 宮城地域自治研究所内 TEL 022-227-9900 FAX 022-227-3267