平成23年1月31日、宮城県に対し,国に直轄事業負担金の返還を求めるよう要求していた裁判に関する判決がありました。
仙台地方裁判所第2民事部はオンブズマンの請求を棄却しました。
判決書は後日アップしますが,この裁判の内容と,判決について取り急ぎ説明します。
国の直轄事業負担金として宮城県が納めた直轄事業負担金の中に,国の機関である仙台河川国道事務所のための敷地取得費用が含まれていました。
道路法や河川法では,道路や河川の管理に関する費用は,原則として国が負担する旨定めていますが,法律で特別の定めがあれば,地方自治体に対して,一部負担させることができる旨も規定しています。国は,敷地取得費用は,道路法50条や河川法62条等にある,「その他の管理に要する費用」にあたるとして,宮城県や仙台市に負担させたのです。
地方財政法は,地方自治体の財政について定めたものですが,その中には,地方自治体に処理権限がないことについては,原則として,国が地方自治体にその経費を負担させてはダメで,負担させるためには,法律や政令で特に定めなければならない,といった旨の規定があります。
…そうすると,逆に,法律や政令で定めさえすれば,いかなる費用でも負担をさせることができるとも思えますが,そのように考えるべきではありません。
憲法上,地方自治体は,国とは別にその存在を認められています。国が法律で定めさえすれば,どんな費用でも支払わなければならない,というのでは,国は地方自治体に多額の支出を強制することができ,地方自治という制度そのものが成り立たなくなります。地方財政法4条の5は,国が,地方自治体に対して寄附金を割り当てて強制的に徴収することを禁止していますが,これは,国が地方に対して圧力をかけ,地方自治を脅かすことのないようにするためです。
したがって,道路法や河川法で定めさえすれば,どんな費用でも地方自治体の負担に負担させられるというものではなく,限界があってしかるべきなのです。
そこで,オンブズマンは,道路法や河川法にある,地方自治体に対して負担を求めることができる「その他の管理に要する費用」とは,道路法等が規定する事業を行うために直接必要な経費に限定されると解釈すべきであると主張し,仙台河川国道事務所の敷地取得費用は,事業を行うために直接必要な経費ではないので,「その他の管理に要する費用」に含まれないと主張しました。
しかし,裁判所は,上記のような解釈について,「原告のいう国道の「管理」に直接必要な経費は,極めて相対的な概念であって,国直轄事業負担金としての負担の可否を決する概念としては機能しがたい面があると言わざるを得ない」として,否定しました。
今回の判決で残念な点は,オンブズマンの解釈を否定するのであれば,裁判所が,「その他の管理に要する費用」の限界について,何らかの解釈をし,費用負担の限界について規範を立てるべきであるのに,それをしていない,という点です。
裁判所は,「結局,道路法49条が規定する「管理」に関する費用について,直接経費,間接経費を区別することなく,形式的な文理のとおり,これに要する一切の費用をさすことを前提にしたことをもって,本件負担を違法無効であるとすることはできない」と判示しました。
これは,結局,「管理」の費用という名前がつけばどんな費用でも地方自治体に負担させる事ができる,と言ったに等しいものです。「形式的な文理」どおりの解釈でよいのだ,という判示は,道路法,河川法の上位にある憲法,地方財政法の趣旨を全く顧慮しないもので,残念というほかありません。
オンブズマンとしては,控訴する方針です。
畠山