補助金問題で高裁判決
平成20年10月31日仙台高裁で地下鉄南北線に対する一般会計からの補助金が地方公営企業法17条の3に違反しているか否かの判決がありました。裁判所は、違反するものではないと判断しました。「恒常的に」補助金を出すことが「特別の理由」があるとして許されるのであれば、法律が定めた地方公営企業の「独立採算性」は絵に描いた餅になってしまいます。判決はいろいろ長々と「理由」を述べますが、長々になるのは、論理をごまかしているからに他なりません。
南北線の赤字と補助金額
地下鉄東西線が建設中ですが、東西線は予測の半分しか乗車人員がいないので運賃収入が建設費の回収はおろか人件費・運行経費というランニングコストすら賄えないのではないかと危惧されています。本当にそうなったなら、東西線建設を強行した仙台市長や関係職員・市会議員の責任は重大で、きちんと責任を果たしてもらわなければならないのですが、
南北線も、乗車人員の過大予測(予測30万人に対して実情16万人)によって、赤字が平成19年度末で約1100億円に達しました。実はこのほかに740億円ほど赤字穴埋めのために補助金が注ぎ込まれているので、実際の赤字は1840億円となります。</u>裁判となっている平成17年、18年の補助金は合計25億円ほどでしたが、平成19年度は約20億円となりました。平成20年度は約25億円、平成21年度以降は30億円を超える補助金を出すことが予定されていて、今後も市民の税金が地下鉄事業のために使われていきます。
地方公営企業の独立採算原則と補助金
地方公営企業は、独立採算で企業運営をしなければなりません(独立採算が無理なら企業化せずに一般の都市施設として運営することになります)。但し、政令(地方公営企業法施行令)で定められた特定の経費については一般会計からの補助を受けることができます。政令で定められたもの以外は、地方公営企業法17条の3で定めている「災害の復旧その他特別の理由により必要がある場合」にのみ補助金を受けることができることになっています。
政令は、概略「性質上地方公営企業の収入で賄うのが適当でない経費」「性質上地方公営企業の収入でまかなうことが客観的に困難な経費」について、補助ができる経費を特定して定めています。
判決は、政令の定めは「通常考えられる経費」として一般会計が負担すべき経費を特定しているので、「臨時例外的経費・個別具体的経費」については「特別の理由」によるものとして補助ができるという判断をしました。
補助される補助金のほとんどは、地下鉄建設のために発行した債券(借入金)の償還のための経費です。地下鉄の建設に多額の費用がかかることは最初からわかっていることで、「臨時例外的経費・個別具体的経費」とは言えません。建設費のための借入金の返済に補助が必要ならば、最初から政令は補助を認めているはずです。しかし、そうなってはいません。
鉄道事業法5条により経営上健全であることが鉄道事業の許可に際しては必要です。鉄道事業許可を受けるときは、独立採算で運営ができなければ「経営上健全」と言えません。従って、地下鉄は補助金なしで運営ができる建前になっているので、地下鉄建設費の償還費用を、政令は補助対象に記載できるはずもないのです。
判決の評価と今後
判決は、地下鉄事業が補助金なしに成り立たないという現状を追認して、法律の解釈を捻じ曲げたとしか言いようがありません。憲法9条のような高度の政治問題でもない地下鉄事業の問題で、法律をきちんと適用せず言い逃れのような解釈を行うことでは、法律やそれを司どる司法の尊厳は、ともども画弊に帰してしまうでしょう。納得できかねる判決で、上告し最高裁の判断を求めます。なお、赤字必至の地下鉄事業の推進こそが本当の問題です。一時的に不足した収入を穴埋めするためだけであるなら一般会計から一時借入すればよいことで、経営状態が良くなれば返せば済むのです。返す必要がない「補助金」を出すと言うことは、地下鉄事業が黒字にならないという何よりの証拠です。東西線ができたらば大幅赤字は必至で、仙台市の財政負担は増大します。政治責任は結果責任といいますが、誰が責任をとるのでしょうか。今後も機会を捉えて、東西線建設を中止させなければならないと思います。